地方競馬ドキドキコラム

【コラム】NARグランプリ受賞者で見えてくるもの

2024年01月16日

 NARグランプリ2023の受賞馬・受賞者が発表された。
 年度代表馬は2年連続で兵庫のイグナイター。無敗のまま南関東三冠を制した大井のミックファイアと、どちらだろうと言われていたが、ミックファイアは最後の東京大賞典GIで着外に敗れたことがマイナスポイントになったと思われる。
 どちらもJpnIを勝っているのだから年度代表馬にふさわしい実績だが、イグナイターは2年越しのJBCスプリントJpnI挑戦での制覇は掛け値なしで素晴らしい。ほかにJpnIIのさきたま杯のタイトルもあり、仮にミックファイアが東京大賞典GIで好走していても、勝つでもない限りダートグレードでの実績はイグナイターのほうが上だったということもできる。
 
 受賞者では、最優秀賞金収得が調教師、騎手とも南関東なのは当然だが、最優秀勝利回数は高知・田中守調教師、兵庫・吉村智洋騎手、最優秀勝率は、兵庫・柏原誠路調教師、高知・赤岡修次騎手と、兵庫、高知の調教師と騎手がそれぞれ分け合った。
 
 なかでも大接戦だったのが調教師の勝率。柏原誠路、田中守、愛知・川西毅の3名が30%を上回るラインで競り合い、3名とも大晦日まで出走があったため、まさに最後の最後までそのタイトルの行方が注目となった。
 結果、NARのデータベースでは柏原31.0%、田中31.0%、川西30.2%(NARグランプリでは中央や海外での成績も加味されるが、3名とも2023年は地方競馬のみの出走)。小数2位以下での勝負となって、柏原:290戦90勝で31.034%、田中:665戦206勝で30.977%という僅差。1勝するかしないかではなく、負けた馬を1、2頭、出走させたかさせないかというレベルの差だった。
 田中調教師にとっては、勝利回数とのダブル受賞を惜しくも逃したという結果だった。
 
 しかしながら田中調教師で注目すべきは、勝利回数でも勝率でもなく、賞金。
 最優秀賞金収得調教師賞は、ダントツの数字(6億6737万円、千円以下略、以下同)で浦和・小久保智調教師が5年連続9回目の受賞となったが、なんと、4億4444万円で2位が高知・田中調教師。4億231万円で3位が兵庫・新子雅司調教師、3億9050万円で4位が大井・渡邉和雄調教師と続いている。
 冒頭でも触れたとおり、新子調教師はJBCスプリントJpnIをイグナイターで制したのを含め重賞12勝、渡邉調教師はミックファイアでの南関東三冠を含め重賞7勝。一方で田中調教師は地元高知のほか、佐賀、園田も含め重賞13勝を挙げているがグレード勝ちはない。それでいて収得賞金がJpnI勝ちのある調教師を上回るというのは、いかに今の高知競馬の賞金が高いかということを示している。
 ちなみに田中調教師の代表馬には高知三冠に加えて高知県知事賞まで制したユメノホノオがいるが、昨年同馬は8000万円を稼いだ。JBCスプリントJpnIの1着賞金と同じ額だ。
 
 高知競馬が売上不振で廃止寸前のどん底から、近年大きく売上を伸ばしV字回復を遂げたことは、おそらくご存知のとおり。もっとも落ち込んだ2008年度の高知の年間売上は38億8千万円余りだったのが、2022年度は946億円余り。約24倍もの売上を記録するようになった。
 田中調教師の最優秀勝利回数調教師賞受賞は2010年以来2度目のこと。前回の受賞は高知の売上がどん底に近い時期で、田中調教師の収得賞金は3600万円余り。賞金のリーディングでは全国で100位にも入っていなかった。そして13年ぶりに勝利数の全国リーディングを獲得した昨年、収得賞金は12倍以上になった。
 年間での売上だけでなく、そうした個人の収得賞金を見ても、ここ十数年でいかに高知競馬の売上と賞金が上昇したのかがわかる。

文/斎藤修


 

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