地方競馬ドキドキコラム

【コラム】全国で重賞を勝ちまくる吉原寛人騎手

2023年11月30日

 コロナによる社会生活の制限がなくなって約半年が過ぎた。競馬が無観客で行われていたことなど、もはや遠い昔のことのようだし、飲食店など時短営業を強いられ、夜の繁華街がまるでゴーストタウンのようだったことも、夢を見ていたのではないかとも思えるようになった。
 競馬もコロナ以前とほとんど同じ状況に戻ったことで、騎手が所属場以外で騎乗する際の制限がなくなり、地方競馬の重賞でのスポット騎乗も以前同様に戻った。というか、むしろコロナ以前よりもそうした移動が活発になったかもしれない。
 
 そして全国の競馬場を飛び回って活躍しているのが、吉原寛人騎手だ。ほとんど毎日のように重賞が行われている競馬場で乗っているのではないかという印象だ。
 ただ残念ながら11月9日の門別・道営記念で騎乗馬がレース中に故障し、落馬負傷。北海道の病院に入院していたが、22日に退院。現在は自宅に戻って療養しているとのこと。
 診断は、右耳部分損傷、鞭打ち症、両腕右膝打撲、腰椎突起骨折で、体じゅう怪我を負ったという状況だ。逃げていてスピードに乗ったところでの落馬で、後続も巻き込まれ6頭が落馬という状況では、むしろこの程度で済んで不幸中の幸いだったというべきかもしれない。
 年内の復帰は無理だろうという話が伝わってきていたが、本人にうかがったところ、なんと、12月中旬(!)の復帰を予定しているとのこと。
 騎手に限ったことではないが、一流のアスリートなど、骨折したあとの復帰の早さには驚かされるばかりだ。多分に無理をしているところもあるのだろうが。
 
 コロナによる制限がなくなって全国を飛び回っている吉原騎手の活躍は、今年終了後にデータを中心にまとめてみようと思っていたのだが、そういうわけで少なくとも1カ月は休みとなるので、このタイミングでまとめてみることにした(データはすべて11月24日現在)。
 
 今年、ここまで634戦165勝は、地方全国リーディングで10位。勝率26.0%は、リーディング100位以内の騎手の中では5位となっている。そして競馬場ごとの成績は以下(騎乗数-1着-2着-3着)。

 門 別:17-0-1-5
 盛 岡:8-2-1-0
 浦 和:9-0-1-1
 船 橋:11-1-3-2
 大 井:71-13-5-5
 川 崎:30-7-3-5
 金 沢:277-84-64-38
 笠 松:4-1-1-0
 名古屋:4-0-1-1
 園 田:16-3-3-2
 姫 路:1-0-0-0
 高 知:184-53-40-23
 佐 賀:2-1-0-0

 地元金沢での勝率30.3%はスゴイが、今年3月15日まで期間限定騎乗していた高知でも28.8%(期間限定期間以外も含む)というのもスゴイ。そして水沢以外の平地全場で騎乗しているということもスゴイ。
 そして今年の重賞勝利は以下。

 3/19 高知・土佐春花賞 ユメノホノオ
 4/9 金沢・金沢競馬移転50周年 ハクサンアマゾネス
 4/27 笠松・オグリキャップ記念 セイカメテオポリス
 4/30 高知・黒潮皐月賞 ユメノホノオ
 5/7 金沢・利家盃 ハクサンアマゾネス
 5/21 金沢・お松の方賞 ベニスビーチ
 5/24 大井・大井記念 セイカメテオポリス
 6/4 金沢・百万石賞 ハクサンアマゾネス
 6/18 高知・高知優駿 ユメノホノオ
 6/27 金沢・石川ダービー ショウガタップリ
 7/14 園田・兵庫サマークイーン賞 ハクサンアマゾネス
 7/16 高知・トレノ賞 アポロティアモ
 7/23 盛岡・ハヤテスプリント スタードラマー
 8/20 高知・建依別賞 アオロティアモ
 8/23 川崎・スパーキングサマーカップ スマイルウィ
 8/27 高知・黒潮菊花賞 ユメノホノオ
 9/6 大井・東京記念 セイカメテオポリス
 9/10 佐賀・西日本ダービー ショウガタップリ
 10/27 園田・兵庫クイーンカップ ハクサンアマゾネス
 11/1 園田・楠賞 ボヌールバローズ

 吉原騎手は今年、全国の地方競馬でここまで重賞82戦20勝。世間的にコロナによる制限が解除される5月上旬まで、南関東など重賞のスポット騎乗が認められていない競馬場があったため(馬と一緒に遠征する交流レースでの騎乗は可)、4月までは期間限定騎乗している高知、その後地元の金沢以外での騎乗は少なかったが、5月以降は毎週のように全国のどこかの競馬場で騎乗するようになった。
 
 記録的なことでは、ショウガタップリで佐賀の西日本ダービーを勝ったことで、現存する地方競馬の全場重賞制覇にリーチ。残すは姫路だけとなった。
 姫路競馬場は開催日数が少なく、来年の重賞は、1月25日に兵庫クイーンセレクション、2月8日に兵庫ウインターカップ、同15日に白鷺賞、同22日に兵庫ユースカップと4レースが組まれているだけ。その限られた機会で、地方全場重賞制覇となるかどうか。
 
 吉原騎手の復帰でもうひとつ楽しみになるのは、高知で今年三冠を制覇したユメノホノオだ。11月19日の土佐秋月賞は、佐賀で期間限定騎乗中の石川倭騎手(北海道)が鞍上となり、高知の3歳重賞完全制覇を達成した。吉原騎手が12月中旬の復帰を目標としているということでは、ユメノホノオにとって古馬重賞初挑戦となるであろう、大晦日の高知県知事賞を意識しているのではないだろうか。

文/斎藤修


 

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